戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2022.4 N0.61
「明治の日」は日韓の溝を深める
「文化の日」を「明治の日」に改称する運動の設立総会が四月七日にあった。自公他、維新、立民、国民の超党派議員が集まった。自民古谷会長は「明治は欧米列強に圧力をかけられながら独立を守り、近代化を果たした歴史的な時期だ。(改称の)意義は非常に大きい」(4月23THESANKEINEWS)と言及してその栄光を称えた。
明治は朝鮮半島への覇権争いの歴史も背負っている。古くは豊臣秀吉の朝鮮出兵、明治に入って征韓論が台頭し、韓国への足掛かりに動き出したのが明治八年の江華島事件だ。日本の干渉に、韓国内では抗日運動が頻発したが日本は過酷な弾圧を加えた。韓国の支配権をめぐる日清日露の戦争で日本は勝利した。その仕上げとして明治末期の四十三年、韓国併合に至る。時代の陰には、隣国を踏み台にして欧米列強への対抗のために血道をあげた姿が浮き出る。
「地図の上朝鮮国に黒々と墨をぬりつつ秋風を聴く」。日本に併合された朝鮮の民に思いを馳せて、石川啄木はこのように詠んだ。そして今、隣国の人達は「明治の日」をどう思うだろうか。冷えきった日韓の溝が深まるばかりと思うのは杞憂だろうか。四月十三日は啄木の命日、この歌がことさらに懸念を増幅させる。
原発国は戦争できない
「東海第二周辺で37万人死亡」4月5日付東京新聞茨城面の見出しだ。環境経済研究所が一定の条件の下でシミュレーションした結果を公表した。原発が武力攻撃を受けた場合、格納容器の破損により放射性物質が大量に放出拡散されて、茨城埼玉両県と東京都の広い範囲が立ち入り禁止となり、関東一円が強制移住の対象範囲になってしまう。また、新潟柏崎原発への武力攻撃でも、周辺5万9千人が死亡、群馬県の広範囲が立ち入り禁止に、東京都及び埼玉神奈川県の大部分が強制移住区域になる。いずれも想像を絶する惨状には違いない。
三月にウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会に向けてオンライン演説した際に、ウクライナ国内の原発がロシア軍の攻撃晒されたことへの危機感を訴えた。日本の防衛戦略上の弱点に警鐘を鳴らしたのである。
日本国の原発は海岸線に沿って18か所に配置されている。それぞれには、稼働中から停止、廃炉対象のもの全体で59基ある。これら多くが攻撃で破壊されたならば、一国一民族の存続が成り得ないことが想像される。
これは明らかに国防上の弱点であるが、この問題を正面から取り上げた防衛論が聞こえてこないのは何故か。それは防衛戦略が成立しなくなるからだろう。つまり、日本は戦争が出来ない国なのだ。この見地に立てば、腹を据えて平和外交に軸足を移す他に術はない。力の防衛を声高に叫ぶことは亡国の論である。
食料危機に備えよと!
「日本は食糧危機に突入した」鈴木宣弘氏(東京大学)はこのように警鐘を鳴らす(「月刊日本」5月号)。ウクライナ侵攻が起こり、食料調達事情が一気に深刻化するとの予測である。
小麦は世界の輸出量の3割をウクライナとロシアが占めている。戦争当事国の生産と輸出が減れば各国の間で深刻な争奪戦が生じる。肥料のリンとカリの生産国も中国他、ロシア、ベラルーシで戦争当事国だ。100%輸入依存の日本は調達難になれば農業生産量は激減する。
日本の食料自給率は37%と低い。大豆は9割が中国輸入に依存し、外食産業が使う冷凍野菜も中国からの輸入が5割である。台湾有事の際は防衛出動せよと勇ましく言う政治家も多いが、中国による兵糧攻めに覚悟があるのかと問いたい。力による安全保障ばかりが前のめりになり、食料安全保障の議論は聞こえて来ない。
私たちは狭い庭先やプランターに食料自給のイモや野菜を植えて、来るべき飢餓に備えねばなるまい。お金や武器で腹は満たせないのだ。
反骨の志(し)の蠢(うごめ)いて啄木忌 昌利
この危機が田畑に働く人たちへ感謝をせよと我の背を突く 蒼果