戦争の過ちを二度と繰り返さないために
シンボライズドデモ
集団的自衛権の行使容認や改憲に反対する女性たちが、赤のファッションを身に着けて国会を囲む「女の平和」ヒューマンチェーン(人間の鎖)が2015年1月17日に行われました。男の私もこのデモで反対を訴えることを目的で参加して、“赤いファッションデモ”のインパクトを感じましたのでその印象をリポートします。
なぜ赤なのか?
デモを主導した一人横湯園子氏(元中央大教授)によれば、原点は1970年代北欧アイスランドのレッドストッキング運動がモデルだそうです。意識ある女性たちが赤いストッキングを着けて家事を放棄した。そして大統領府前に集まり、女性の役割の重要性を訴えたそうです。その後、誕生した女性大統領が首都レイキャビックで米ソ首脳会談開催に尽力して、冷戦終結につながったそうです。
横湯氏は訴えます。
海外で戦争ができるようになれば、逆に攻撃もされる。テロだって起こり得ます。子供を戦場に送り出したくない。夫を殺されたくない。そう訴えることが大きな意味があり、力になると言うのです。
このデモ参加呼びかけをネットと新聞で見たときに、赤いストッキングはじめスカーフ、手袋、バッグなどとにかく赤であれば何かを身に着けてとの呼びかけです。当日、主催者発表七千人参加は国会議事堂周囲歩道2キロメートルを取り囲む二重巻き、場所によっては三重巻きになったほどの盛況ぶりでした。女性の多くは六十代以上ですが、ファッションを意識した二十代三十代の若い参加者も目立ちました。
写真にあるように歩道は赤のヒューマンチェーンです。男の私はいささか気後れしながら赤系ダウンジャケットを着て参加しました。男性は見たところ少数のようでしたが、赤い帽子、ジャンパー、マフラーなどそれなりに気を使っての参加でした。
午後1時から3時までの2時間、落合恵子氏、澤地久枝氏、湯川れい子氏、雨宮処凛氏、神田香織氏など作家、芸能人、エッセイスト他、研究者、弁護士、野党議員、人権活動家十数名の女性による現政権批判演説はわかりやすい内容でした。
シュプレヒコールの内容を紹介します。
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※「女の平和」1.17国会ヒューマンチェーンのFacebook
※写真はレイバーネットより
このような国会や街頭デモなどの参加者は、その多くが六十代以上の方々が主体になっているその一方で、若い年齢層の参加者が少ないことが気がかりです。リタイア世代と比べて、仕事や子育てに追われる世代の生活環境がデモ参加を難しくしている背景があることは理解できます。しかし、ここ1年くらい前から、デモの形態に新しい変化が起こっているようです。
例えば、2014年7月30日に東京新橋で起きた「スーツデモ」がそれです。通勤服のスーツ姿の男女が脱原発などを訴えて、ビジネスマンが行き交う新橋の繁華街をブラカードを掲げて行進しました。参加者からは新鮮な気分でデモに参加できたと好評のようです。スーツ姿がデモ参加者の心理をつかんで敷居の低さを感じさせたのでしょうか。また、10月25日には東京渋谷でヒップホップ音楽に乗せたラップ調でコールする大学生を中心とする「おしゃれデモ」が特手秘密保護法反対を掲げて練り歩きました。ださいデモには敬遠するが、おしゃれしてデモは楽しいとのことです。さらに、特定秘密保護法が成立した直後の2013年12月26日には、「秘密はいやだ!U-20(アンダー・トゥウェンティ)デモ」と称する都内の大学生高校生中心のデモが若者でにぎわう原宿と渋谷でコールを揚げました。十代の若者の政治的関心を喚起する力を感じます。
色をシンボルにしたデモで最も新しいのが米軍普天間飛行場の辺野古移設に抗議するデモです。「青のファッション」を身に着けて国会を包囲するヒューマンチェーンが2015年1月25日に行われます。青はジュゴンのいる辺野古の澄んだ海の色をシンボル化したという。基地移設問題では沖縄住民の民意を全く無視した現政権への怒りを国民全体の問題として東京でぶつけることに意味があると主催者は訴えます。
これらシンボリックな赤も青もそうですが、従来型の直接的なシュプレヒコールだけに頼れないメッセージ性とシンボルで問題意識を共有しようとする行為がこれらのデモにおしなべて現われているように感じます。そこには多様な表現の自由さに臆することなく、かき消されそうな民主主義を何とか守ろうとするマジョリティーに希望が見えてきます。