戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「九条の会さかい」発信 2021.12 No.57

2021年12月29日 17:00

市民野党共闘の継続を

 立憲民主党と共産党が先の総選挙で議席を減らしたことに、市民連合と野党共闘を不発と評すマスコミの論調も多い。国民民主党や維新からの風当たりも強く揺さぶりがかかる。

 しかし、私たち市民目線からは、議席の増減にとらわれた評価は近視眼的である。選挙区の7割で共闘が実現して、与野党接戦区が広まった。結果は、289の全小選挙区中4割で接戦になり、与党自民党を後退させた。

 市民野党共闘は、国民の命を優先する社会を目指した20項目の共通政策を掲げたことで有権者に選択肢を示した。来夏の参院選でも多くの選挙区で1対1の与野党対決構図をつくるべきであり、その成果を期待したい。

 

 

 一人の原告が国を追い詰めた

 森友学園への国有地の不当な払い下げに関して、財務省の公文書改ざんに関与させられた近畿財務局の職員赤木俊夫さんが自殺に追い込まれるという痛ましい事件が起こった。赤木さんの妻は、事件の真相解明を国(政府)に求めて国家賠償請求を起こした。

 この公文書改ざんの発端は、当時の安倍首相が「私や妻が関与していたならば首相も議員も辞める」と答弁したことにある。これによって佐川理財局長は首相夫人が記載された箇所の改ざんを近畿財務局に指示したとの見方が通説となっている。究明は佐川氏の国会参考人招致で証言拒否、検察は佐川氏ら関係者を不起訴にした。真相の扉が閉じられかけたことで裁判に訴えた。しかし、被告の国は突如「認諾」という手口を使い、一億円の賠償を支払うことでこの裁判を終結させた。これで一切の真相が閉じられてしまった。原告赤木さんの妻が求めた高額な賠償金は、裁判を安易に結審させないために被告の国に括り付けたくびきだったが。

 一方でこの裁判の続行は、現政権の維持に致命的な痛手になるとの脅威を与えたのだろう。一人の女性が起こした裁判は、時の総理を守るために忖度を強いた権力機構に痛烈な打撃を与えようとしたことには違いない。知る権利を国に突き付けた訴訟に私たちは声援を送る。

 

 

 国民民主党の9条改憲案の危うさ

 先の総選挙で議席を伸ばした国民民主党は、改憲でも前のめりの発言が目立っている。維新と合流する姿勢がそれを増幅させている。最早、自民党改憲補完勢力でもある。ではどんな改憲案を持っているのか、9条をたどってみた。

 国民民主党「政策INDEX 2019」改憲には、『国が自衛権を行使できる限界を曖昧にしたまま、憲法9条に自衛隊を明記するべきではありません。海外の紛争に武力をもって介入しない、憲法9条の平和主義の根幹を覆すことは許されません、平和主義を断固として守ります』とあり、条件付きで現行9条を擁護している。 
 翌年12月に公表した改憲案についてTHE SANKEI NEWS 2020年12月7日によると『憲法9条をめぐっては、自衛権行使の範囲や自衛隊の保持・統制のルールを規定する必要性に触れつつ、(1)9条2項を改定し、制約された自衛権行使の範囲内での実力行使、自衛隊の保持を明記する(2)9条1、2項を維持した上で、制約された戦力、交戦権の行使を認める例外規定の

設置―の2つの条文イメージを列記した』とある。ここでは自衛権の範囲をどのように限定するのか不明であるが、その上で実力(疑似戦力)の保持と交戦権を容認している。
 この条文を自民改憲案に照らし合わせれば、9条2項にある自衛のためには現行9条の縛りを骨抜きにする内容に通じるように読める。

 日米同盟強化による集団的自衛権を容認した現安保法制の下では、抑制的な自衛権を維持することは至難の事である。特に9条は戦争への反省と不可分の関係にある。そして、憲法は国家の基本法であるから、時代や状況に流されない安定性を維持すべきではないか。
 

 

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