戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「九条の会さかい」発信 2021.6 No.51

2021年06月30日 18:09

「奴隷根性と無関心」に嵌まらない

 10月21日任期満了の衆院議員、秋までに必ず選挙になる。都議選7月4日、五輪パラ開催なら7月23日から9月5日まで、この間の解散はないだろう。憲法は「衆院解散から40日以内」選挙と定め、公選法では「任期満了前の30日以内」となるから、マスコミは9月26日~10月17日と読む。総裁任期が9月30日に迫った菅首相、支持率の動向を睨んで解散に踏み切るのだろう。

 注意すべきは政権支持率が落ちれば菅降ろしによる安倍再々登板が現実になり兼ねず、自民大勝となれば国民は恥の極みのレッテルを自らに貼るような最低のブラックユーモアだ。

 政治学者白井聡は自著「主権者のいない国」の中で国民の姿勢を鋭く浮き彫りにした。「安倍政権を永らく支えてきたのは、完成した奴隷根性と泥沼のような無関心である。(中略)政府の腐敗・不正・無能に苦しむのは、全くの自業自得に過ぎない」と。

 これまで幾度か取り上げた「投票率10%UP運動」、安倍政治の罠に嵌まった無関心から抜け出して、投票する国民の再生にある。今年に入って、定例の古河駅活動ほか機会ごとに呼びかけている。「皆さん 選挙に行こう!」

 

 開催前夜と開戦前夜

 菅政権は東京五輪開催可否の議論を排除した。観客数上限とした論議の流れをつくることに血道をあげた末に「上限一万人」と決定した。尾身氏はじめ東京都医師会による「無観客」提言までをも退けてしまった。

 政府の姿勢を戦前日本に重ねた批判が多い。その思いを共有させる本がある。猪瀬直樹著「昭和16年の敗戦」。太平洋戦争に突入する直前、既にその結果を予見した集団があった。「内閣総戦力研究所」、日米開戦の四か月前、内務官僚、外交官、陸海軍武官、重工通信海運報道界社員総勢三十六名、平均三十三歳からなるエリート達が内閣府に集められ、戦争シミュレーションを行った。その行方は日本の「必敗」。彼らが想定した戦争は、奇襲戦で勝っても戦争は長期化し、物量の劣勢とソ連参戦が敗因となり、「日本に勝機なし、戦争回避すべし」と下した。予見は起こった実際と酷似していた。

 これに神経を逆なでた東条陸軍大臣、いわく「実際の戦争は机上の論とは違う。実際、勝てるとは思わなかった日露戦争に勝ったではないか。意外裡なことが勝利につながるものだ」と一蹴した。そして、日米開戦と敗戦が国民を惨状に陥れた。
 コロナ第4波の兆候の下、五輪強行に警鐘鳴らす専門家が多い。救える命が救えなくなる惨禍を被るのは当時も今も国民だ。

 

 「土地規制法」と冤罪「レーン・宮沢事件」

 「土地規制法」が成立した。自衛隊や米軍基地、原発などの周辺1キロ範囲と離島全体を「注視区域」や「特別注視区域」に指定。土地使用者を調査したり、売買を規制する。区域の機能を阻害すれば中止命令や刑事罰を科す。

 この法の脅威は、施設や区域の指定の仕方、誰がどう調べるのか、阻害行為とは何かを明文化せず、恣意的運用になり易い。特に、米軍が大半を占有する沖縄では基地反対運動への弾圧が容易になり、人権侵害が合法化され易い。

 太平洋戦争中、北海道帝大の米国人教師夫妻と学生がスパイ容疑に問われた冤罪「レーン・宮沢事件」。日米開戦の夜、帝大生の宮沢弘幸は海軍根室飛行場の存在をレーン教師夫妻に話した。飛行場はリンドバーグの世界一周飛行で既に知られる存在だったが、軍機保護法違反で逮捕された。教師夫妻は国外退去、宮沢さんは特高警察による逮捕拷問の末、網走・宮城刑務所に服役、終戦後釈放されたが2年後に死亡。
 立法事実さえなく、恣意的運用の危険がある「土地規制法」は戦中の冤罪事件と重なる。こんな法律の存在を許してはならない。
 

 

 「 太き尻人払ひして雀蜂 」

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