戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「九条の会さかい」発信 2022.1 No.58

2022年01月31日 13:09

 潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな

 岸田政権最初の通常国会が始まった。改憲論議は、本家自民よりも維新と国民民主党の方が威勢がよい。その姿勢は、この三年の間繰り返されているコロナ感染拡大に対する手詰まり感や周辺国との軍事的緊張を逆手にとるかのようにも映る。その一方で渡りに船とばかりに、岸田首相も改憲に前のめりになっている。

 こんな国会風景に、万葉歌〈 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな 〉が浮かんだ。朝鮮半島に勃発した「白村江の戦い」に出兵せんとする倭軍を額田王が詠んだが、月と潮はどうぞお渡りくださいと自民をいざなう維新と国民党の様で思わず苦笑する。

 各党の立ち位置からは、護憲は立民(たぶん)、共産、社民、れいわ新選組に対して、改憲は自民、公明、維新、国民の勢力が描かれる。改憲派は衆院347議席を占めて発議要件310議席を十分に満たす。同様に参院も169議席を占めて同164議席を超える。

 発議の行方は今夏の参院選が正念場だ。立民は国民党との連携を模索する。改選過半数を野党が獲って流れを変えたいとの思惑だ。しかし、改憲に傾く国民党を抱き込むリスクは大きい。遅かれ早かれ国民投票になろうとの危機感を私たちはぬぐえない。これまで以上に「改憲ノー」の発信が求められる。

 

 

 「敵地攻撃能力保有」への国民の危惧感

 改憲と併せて、「敵地攻撃能力保有」の論議も国会から声高に聞こえてくる。岸田首相の答弁は、ミサイル迎撃能力を越えて、敵地攻撃能力保有にまで手を染めようとする姿勢があからさまだ。首相は日本の存立危機事態を前提にして、集団的自衛権を容認した安保法制に則れば、日本が攻撃を受けずとも、同盟国が攻撃されたことで武力行使できると答弁している。

 従来の政府はこの問題に対して「わが国土が攻撃された場合」のみにおいて反撃を容認するとしてきたはずであるが、今や集団安保法制によって戦争への扉が一枚づつこじ開けられようとしている。それによる武力行使は、日本からの先制攻撃と見做されるだろうし、積極的に同盟国の戦争に加担することに等しい。一方で、周辺国は日本を好戦的な国と見做すかも知れず、それ故に他国間の紛争に巻き込まれる危険が高まる。そんな危惧感を持つのは、私たち国民だけとしたならば恐ろしいことこの上ない。

 

 

 福島小児甲状腺がん訴訟

 原発事故による放射線被ばくで甲状腺がんになったとして、事故時に県内に住んでいた当時6歳~16歳の男女6人が今月27日、東電を相手に損害賠償を求める訴訟を起こした(東京新聞19日より)。男女は県民健康調査で甲状腺がんと診断され、甲状腺全摘あるいは片側切除している。中には肺に転移した人もいる。これによって、就学、就職を余儀なくされたり、結婚や出産への強い不安を抱えていると言う。昨年6月までで甲状腺がんまたはその疑いとの人たちが300人に上る。通常、小児甲状腺がんの発症数は年間百万人に1~2人程度とされている。それほど県内で多発しているにもかかわらず、県の専門家会議は被ばくとの因果関係を認めようとしていない。

 手元にDAYSJAPAN2015/7資料がある。チェルノブイリ原発事故において、事故から4~5年後に小児甲状腺がんが増えた。国際原子力機関は多発を認めなかったが、事故後8年目になってようやく多発を認めたケースだ。

 原告の背後には同様な不安を抱えた300人ほどの発症者がいる。県の専門家会議には被ばく患者に寄り添う姿勢は感じられない。なお更に裁判所による救済を期待したい。

 東海第二原発は避難計画の実効性が裁判で指摘され、再稼働差し止めになった。30キロ圏内だけでも94万人が住む。事故の深刻さを想像すると老朽原発の再稼働は認められない。



北風(きた)強し角の老舗の更地かな




 

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