戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「9条の会さかい発信」 2020年11月 No.44

2020年11月27日 00:57

  一票の格差3倍と改憲発議の重み

 昨年7月の参院選の「一票の不平等」訴訟に最高裁は今月18日に3倍の格差を「合憲」と判決したことに注意を要す。
 格差が生じるのは都道府県単位とする選挙区である。昨年参院選で宮城選挙区の1票は福井選挙区有権者の0.33票の価値しかなかった。一人の有権者の政治的権力が選挙区の違いによって三分の一しかない不平等に是正を求めることは当然のことである。
 留意すべき問題は、菅政権に移行しても政府自民党が改憲を強く推し進める現況にある。改憲発議に必要な議席数が三分の二を境に一議席上回るか否かで議席の持つ意味が極めて重い。有権者の意思が議席数に正確に反映されていることが重要だ。
 日本国憲法前文は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し・・・ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と謳う。ましてや改憲の是非を左右するとなればなおさらのことである。

 

  育鵬社教科書の不採択広まる

 2021年度に全国の中学校で使用する教科書の採択において、育鵬社の歴史教科書は前年度の6.4%から1.1%、公民は5.8%から0.4%へと激減した。
 この教科書採択問題は当会報7月号№40でも報告した。当会は採択前に閲覧し、同社の教科書を採択しないよう境町の教育委員会に要望した。幸い私たちの要望の通りになったようである。閲覧では育鵬社の歴史、公民教科書は、日本が犯した侵略戦争への否定的表現や明治憲法の賛辞と新憲法の押し付け論的表現が目立つ。人権については「西洋の人権思想」として、基本的人権の自然権由来と普遍性に理解を導こうとした記述は見られない。

 同社の教科書に対しては、全国の市民団体から採択しない要望が教育委員会や教育の現場に向けて続けられてきた。それらの要望の成果であろうと評価し、その結果を歓迎する。

 育鵬社は「新しい教科書をつくる会」の流れをくむ。第二次安倍政権が掲げた「強い日本を取り戻す」を旗印に教科書検定基準の改訂と右派系団体等の後押しでシェアを伸ばしてきた。しかし、安倍首相退任とともに風向きも変わった。「つくる会」の勢いにも陰りが見えてきた。

 

  うそまみれの首相答弁と高支持率

 「桜を見る会前夜祭」を巡り、東京地検特捜部が安倍元首相の公設秘書らを事情聴取した。これを契機に再び国会では、安倍氏への証人喚問と官房長官として安倍氏を強固に擁護してきた現菅総理への野党の追及が始まった。

 「桜を見る会前夜祭」疑惑は、安倍氏が首相当時から弁護士や市民団体が刑事告発をしていた。検察は安倍首相退任の機を待っていた様に動き出した。地元支援者を前夜祭に招待した際に支払われた懇親会費の不足金を「安倍晋三後援会」が補填していた疑惑について、当時の安倍首相は頑なに否定し続けてきた。その疑惑が事実となれば、公職選挙法違反、政治資金規正法違反に問われる。さらに、国会で虚偽答弁を繰り返し、国会を空転させたことになる。

 ホテル側の明細書によれば安倍事務所が支払った懇親会費が5年間で900万円にも上るとの新事実が出てきた。その結果、これまでの安倍答弁との食い違いが30回以上に及ぶとの報道。私たち国民は唖然とするばかりか、うそにまみれて事の真偽が判然としないままに、罪悪感も希薄になったと想像したくなる。

 「森加計桜」安倍政権三大疑惑も何一つ明らかになっていない。前現首相と取り巻き政治家と官僚たちにも良心は残っているだろうか?その一方で高い支持率を維持してきた安倍・菅政権は「他に適当な人がいない」世論に支えられてきた。数多くの不正に無関心を装ってきたのも私たちであることを自覚せざるを得ない。

 

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