戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2022.2 NO.59
自民改憲行脚に
改憲への動きが活発化していることは当会報1月号でも報告した通り。2月1日、自民党は改憲に向けた国民世論の喚起を誘導するために、全国各地で憲法集会を開くことを決めた。党内議員50名の実働部隊を結成するそうだ。石破茂氏など著名議員が五月連休までに都道府県内で最低一回の憲法集会を開くとのこと。
一方、国民が政治に求めているのは、コロナ対策と景気対策、医療や社会保障など生活に密着した施策であって、改憲を望んではいないことは世論調査の結果からも分かる。
そもそも、改憲の発端は主権者である国民の意思が先行することであり、憲法擁護義務のある国会議員から持ち出すことではない。まして、一政党の改憲案を披露して国民を誘導しようなどとは主権者に対して僭越ではないか!自民党改憲案については、民主主義にとって危ういことは当会報で何度も触れた通りである。
現在、「九条の会」はじめ多くの市民団体が「憲法改悪を許さない全国署名」を展開している。当会も同様である。会員による推進活動と併せて、当会報読者と賛同者の皆さんにはご支援をいただきたい。改憲を許してはならない。
なし崩し的敵地攻撃能力保有論
先月会報で取り上げた「敵地攻撃能力保有」は、その後の国会論議の成り行きに危うさを感じている。16日、岸防衛相は自衛隊機(戦闘機)が他国の領域に入って軍事拠点を爆撃し、ミサイル発射を阻止する手段を持つことを「排除しない」と明言した(2月17日付東京新聞)。
この答弁は2015年当時、安倍首相が「外国に出かけていって空爆を行う、あるいは地上軍を送って殲滅戦を行うことは、必要最小限度を超えるのは明確で、一般に禁止されている海外派兵に当たる」答弁から踏み出している。
集団安全保障法制が成立している現在、日米軍事同盟の下、自衛隊が海外で活動する制約がなくなりつつある。その上、敵地攻撃能力がこのような形態で実行されたとするならば、憲法9条の縛りはなし崩しになる。これは明らかな憲法違反であり、「戦争する国になるぞ」と周辺国に威嚇宣言をしているようなものだ。
平和主義への努力を見せろ
この会報を書いている現在でもウクライナ情勢は緊迫の度合いを強めている。ロシアの軍隊がウクライナ侵攻への秒読みを開始している報道が絶えず流されている。米国とNATO(北大西洋条約機構)加盟国はロシアへの経済制裁を発動することで、ロシアの侵攻阻止に圧力をかけている。その一方で両陣営の外交による戦争回避が模索されていることに、世界の多くは希望を繋ぎながら流動的な情勢の行方を注視していることだろう。
20日に放映されたフジテレビ系「日曜報道THE PRIME」のネット録画を観た。出演した小野寺五典元防衛相の言及に違和感を持った。小野寺氏は「この問題は必ず日本に影響する。自国は自国で守るというスタンスがなければ、日本もウクライナと同じようなことになる」と警告した。
そして小野寺氏は、バイデンとプーチン両者の駆け引きについて、「トランプ大統領なら、米国の軍事アセットを周辺に配備して力を示した。バイデン大統領はそれをしないというのであれば、プーチン大統領からみれば『口先だけだな』と。お互いが強い立場にあるからこそ交渉ができる」と発言して、軍事力を誇示する力の外交を説いたのだ。
自国を何に依存して守るかの認識は極めて重要だと思う。しかし、日本の姿勢からは際立った外交努力など見えて来ない。その一方で自国防衛は、米国に追従した軍拡に手を染めるばかりである。戦後の日本が目指した平和主義とは「戦争をしない」「戦争をさせない」ではないのか。そのための真摯な努力を見せて欲しい。
ウクライナ民の怨嗟や凍て強し 昌利
武力にて弄ばるる国境を抱える民に春ははかなき 蒼果