戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2024.4月号 No.84
危うい
政府は従来から使われている健康保険証を12月に廃止するという。これに代わるマイナ保険証だが、医療機関での利用率は5%程度と低迷したままだ。その背景には現行保険証が併存するからとの指摘もあるがそれは違う。政府はマイナポイントを付与して登録者数を積み上げたが、それ以上に利便性を持たせる関心がなかったようだ。さらにマイナ保険証を巡るトラブルは、昨年だけでも1万6千件ものひも付けミスや負担割合の誤表示が発覚している。利用者の不満不信が募り、登録の取り消しさえ出ている。こんな状態で現行保険証廃止すれば医療のさらなる混乱を招き、国民が健康維持することも危うい。現行保険証廃止は容認できない。
河野太郎デジ相は自民党国会議員を通じて、彼らの支援者達にマイナ保険証が使えない医療機関を見つけたら政府に通報せよとの文書を配ったという。利用率の低迷が医療機関にあるとばかりの責任転嫁である。さらに、国民に密告者紛いのことをさせるとは見過ごせない。
なぜそうまでして政府はマイナ保険証に固執するのか。背景には医療分野の個人情報ビッグデータが生み出す巨万の富を標的にする集団の要請と監視社会を構築せんとする政権の思惑が透けて見えるようで危うい。
悪弊を排除せよ
自民党の裏金事件によって政治改革の機運が出ているが、政党交付金については触れられていない。政党交付金とは民主政治の健全な発展を目的として導入された制度であり、各政党に支給されている。ただし、共産党はこの制度に反対して受け取っていない。今年度の政党交付金は315億円余りで、国民1人当たり250円相当の税金が原資である。それが所属議員数と選挙得票率によって配分される。とりわけ自民党には多額の交付金が支給される。
政党交付金の何が問題か。4月20日付東京新聞記事によれば、政党交付金は余れば国に返還しなければならないとのことだが、例外措置として基金に移せば返還を免れるという。各党の基金残高は自民党で216億円(22年度末)、維新12、立民6.6、国民3.4億円等々だが、自民党が桁違いに多い。ところが選挙のある年にはこの基金残高が減少するという。これから政党交付金が選挙費用に転用されることで、豊潤な基金を持つ政党ほど有利な選挙戦が展開できるとの推測が成り立つ。つまり政党交付金はその目的を外れて、かつ納税者の意思の及ばない政党内で使われていることになる。
一方、政党交付金が導入されたことで企業団体献金が廃止されるはずであった。だがそうはならずに政党及び政党支部への企業団体献金は温存された。だから交付金と献金の二重取りとの批判が上がる。政治と選挙が献金と交付金によって歪められている現状を私たちは認識する必要がある。民主政治の健全な発展を支えるためにも、この悪弊を排除すべきである。
奈良達雄先生のご逝去を悼む
「古河市9条の会」代表世話人の奈良達雄先生が4月15日にご逝去(92歳)されました。
奈良先生は当会でも憲法講話をなされ、毎年「核兵器廃絶平和行進」にて境町を一緒に行進していただきました。昨年末には先生はガザ地区侵攻に対してイスラエル批判演説を古河駅前で市民に訴え、私(大竹)も及ばずながら応援演説をした記憶が鮮明です。
一方で文学や短歌に造詣が深く、新日本歌人協会幹事他、文学や短歌の評論等を多く残されました。著書「生きること詠うこと・短歌と憲法のあわいで」では60年安保闘争と短歌の関わりについて、歌人で評者の小池光氏と奈良先生の熾烈な論争に目が奪われ、言論による闘い方とはかくあるべきものかとの思いを持ちました。
今は先生の背中を胸に刻み、市民活動とは何かを考えながら、ご冥福をお祈りします。合掌
地虫出ず我(あ)にも蠢(うごめ)くもののあり 昌利
散りぬべき時は知らねど我が春は身近き人の散るは辛かり 蒼果