戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2018.8 N0.17
中村喜四郎氏「決起」考
「春、六十九歳を迎えた中村が突如目覚めた。新潟県知事選で野党が推す女性候補の応援に動いたのだ。・・・四半世紀も沈黙を続けた男はなぜ今、『決起』したのか」、文藝春秋八月号の地元衆議院議員中村喜四郎氏の取材記事に注目した。
今年一月、旧民主党幹事長岡田克也氏が代表を務める「無所属の会」に加わった。保守政治四十余年、野党への舵を切った政治家はいないと決断の重さを語る。自身の事件と政界復帰後、与党とは距離を保ち、ひたすら「党より人」を掲げて強固な選挙地盤の守りに専念してきたように見える。それ故、決起の本意を考えてみた。
安倍政権自民党は秘密保護法や共謀罪法つくって国民や政権批判する人たちの心を縛ろうとしてきた、と氏は非難する。さらに、森友・加計疑惑では「安倍家の都合で」と官庁の歪みや国会軽視の異常さを憂いる。自民党の自浄作用が働かず劣化をさらす現状に、古巣自民党が安倍強権支配に蝕まれていくことに強い危機感を持ち、警鐘を鳴らそうとしているようだ。
安倍9条改憲案「三項自衛隊明記論による抑止力」を疑問視する。米国に隷従依存する日本防衛政策について、日米間の思惑の違いを指摘し、トランプ氏への懐疑感を示す。さらに、日本を戦力的に圧倒する露中、それを後ろ盾にした北朝鮮、日本の防衛装備による抑止効果を否定する。国民が「この国は自分たちが守る」と強いメッセ―ジを打ち出す牽制効果を主張する。
記事には「角栄最後の愛弟子」の見出し。日中国交樹立、ハト派の恩師を背に負う姿に期待したい。氏の「決起」を歓迎し、言動を見守りたい。
耐えがたい国会の劣化
通常国会が閉幕した。国権機能の劣化が際立った。森友問題で国会を空転させた佐川氏を虚偽答弁で刑事告発をせず。加計疑惑では学園理
事長の国会招致もしなかった。国会は行政監視を怠った。
「高プロ制度」は審議デ―タの捏造、過労死を助長する弊害が指摘された。「カジノ法」は刑法が禁じる賭博の合法化と依存症による生活破綻に人を引きずり込む。参院議席「6増法」は議員自ら「身を切る改革」を放棄した。
国会中の七月始め、西日本を襲った豪雨災害では洪水と土砂災害で200名を超す犠牲者、与党は自らの法案採決に固執して、被災者救済への腰を上げなかった。誰のための国会か。
国民の批判に閉幕後、大島衆議院議長は議院内閣制の前提を揺るがすと苦言。国民からはこの期に及んでと逆に苦言を返したい。国会のあり方は国民生活に地続きだ。その関心を失くしたら、自分の首を絞めることになる。
美術展で読んだ女性像
境町在住の画家光山茂先生から「彩98展」案内状をいただき、展覧会を訪ねた。12名の方々の作品鑑賞後、資料コ―ナ―で足をとめた。その一つ「美術運動」(日本美術会誌No137)、『戦争がつくる女性像』私論(藤重典子)を読んだ。若桑みどり(ジェンダ―史)著書への論考記事だ。紙面の制限から読後感を記したい。
日中戦争から太平洋戦争敗戦までの間、国内では女性が工場・農業労働に駆り出された。当時、家庭雑誌で普及していた「主婦の友」。使われた表紙絵と挿画は戦局の悪化につれて戦意高揚を盛り上げる思惑が絵画化された。負傷した息子を見舞う母は回復させて再び戦場へと送り出す強い女性に。主婦の割烹着は「銃後の軍服」という指摘は印象的だ。満州開拓移民の母子の表情にも発育の良い子供と健康で幸福そうな母親の絵、過酷な土地への移民を促す「だまし絵」との指摘に同感する。
女性活躍社会を喧伝する安倍政権の女性像。働き子育て介護と都合の良い女性像が重なる。