戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「9条の会さかい」発信 2019.10 No.31

2019年10月25日 00:36

“まずまず”感の災害意識

 台風15号の被害は、主に千葉県の人たちの日常生活に長期間の苦労を強いている。その復旧も途上のなか、19号は関東から福島宮城にわたる広域に水害と土砂災害をもたらした。その被害は10月末現在、死者不明者94人、住宅被害五千棟、床上下浸水五万三千棟、二十八都県にわたる広域災害になってしまった。2011年東日本大震災以来の大災害のように映る。

 この大災害がそのようには映らない人たちもいるようだ。自民二階俊博幹事長は19号が通り過ぎた13日午後、被害について「予測されていたことから比べると、(被害は)まずまずに収まったという感じだ」と発言。この時点では死者不明者が三十人以上でさらに増える可能性と多数の河川で堤防決壊や氾濫が報道されていた。いかなる予測の下で“まずまず”の被害に収まるのか。災害への認識と被災者への配慮の無さに呆れる。国民からの非難は当然だ。

 しかし、自民党内からの二階氏への非難が聞こえてこない。国民の生命や財産が失われることへの“まずまず”感の持ち主が多いのだろうと思わざるを得ない。そんな人たちが“国民を守るため”と言って憲法9条や緊急事態条項などの改憲に気勢を挙げている。国民を守ろうなんて本気で考えているとは思えない。

 

恩赦ってなんじゃ?

 国の慶弔時の慣例として恩赦が22日「即位」に合わせて執行されるとの報道。「罰金納付から3年以上経過した人への復権に限定」、対象者が約55万人になるそうだ。恩赦に賛否両論はあるが、違和感を覚える。司法の判断が行政によって覆される、それが三権分立にそぐわないとする論拠に理があるからだ。

 憲法は、73条「内閣は、他の一般行政事務の他、左の事務を行ふ。7項大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。」によって、7条「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。6項大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。」を認めている。つまり、恩赦は内閣の決定により天皇が認証すれば正当な行政行為なのだ。

 歴史的に恩赦は為政者の権威高揚を果たしてきた統治手段であり、日本に限ったことではなく先進国でも現存しているという。日本では天皇統治の旧憲法のなごりであろう。共同通信社の10月世論調査によると、恩赦賛成24.8%、反対60.2%とその支持は低い。犯罪者への処罰感情もあろうが、司法の審判による犯した罪の処罰を無効にして決定される恩赦に対して批判観が強いからであろう。
 いかがでしょうか安倍さん。民主主義の根幹を侵し、国民の支持を得ていない条項こそ改憲論議に取り上げては!

 

公益性というプロパガンダ

 「あいちトリエンナ―レ2019」は市民の強い要望により再開して、今月14日に無事終了した。表現の自由展の復活を喜んでいた。ところが文化庁所管の「日本芸術文化振興会」が助成金交付要綱を改定したという。「公益性の観点から不適当と認められる場合」に助成金交付を取り消すことができるとする内容を新たに付け加えたと報じられていた。

 芸術や文化は表現の自由が保障されてこそ発展していく。それが公益性のフィルタ―で価値判断されたら、芸術や文化は衰退してしまう。そもそも「公益」とは「国益」を置き換えた表現であり、時の為政者に都合の悪い芸術文化活動を認めないと言っているに等しい。特に芸術は先鋭的で、その時代の価値観に対して批判性を帯びた創造物であればこそ存在価値を獲得できる。戦前戦時中には国策として芸術がプロパガンダに利用された。そんな意図に類似してくる。
 

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