戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「9条の会さかい」発信 2019.11 No.32

2019年11月28日 00:11

大江健三郎の予言

 『天皇制が実在しているところの、この国家で、民主主義的なるものの根本的な逆転が、思いがけない方向からやすやすと達成される可能性は大きいだろう。そのとき、《天皇は、日本国の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。》という憲法の言葉は、そのまま逆転のための根本的な役割を荷いうるだろう。〔六九年八月―九月〕』。これは大江健三郎が戦後の沖縄をルポした『沖縄ノ―ト』(岩波書店)中の一節であり、大江の予言である。 

 

 東京新聞読者投稿欄11月6日「憲法『遵守』なぜ消えた」で勝俣明夫氏は、即位礼正殿の儀での新天皇の「お言葉」を凝視した。90年平成即位礼では「日本国憲法を遵守し」として憲法を守る意味を持っていたが、今回は「憲法にのっとり」としか述べていない。「のっとる」は従う意味だけで守るが含まれない。しかも「日本国憲法」とは言わず、ただ「憲法」としただけだと。勝俣氏の慧眼に意表を突かれた。

 

 同紙11月12日二面に、社会学者の大澤真幸氏は「天皇制の意味 問い直す時」で大嘗祭即位を「儀式は、何らかの崇拝心を引き出そうとするフィクションにすぎない」と射貫いた。また同紙15日二面で、憲法学者の笹川紀勝氏は24億円もの国費を投じた国家機関丸抱えの儀式を憲法20条「政教分離」に反すると断じた。さらに、「天皇は即位にあたり『国民に寄り添い、憲法にのっとって責務をはたす』と誓った。しかし、台風や洪水の被害に苦しむ国民がいるというのに・・・天皇のためのお祭り騒ぎが続く。それは国民一人一人に寄り添う姿勢ではない。天皇は何を守ろうと考えているのだろうか」と疑念を投げかけた。

 

 半世紀前の大江の一節を反芻する。その予言が地位と総意の逆転ということならば、民主主義が排除された後に策動し出すものに怯える。

 

 

 

「他に適当な人がいない」でよいのか

 11月20日で安倍さんは在任が7年11ケ月、歴代最長の首相となった。その理由に諸論あるが「安倍さんに代わる人材が見当たらない」消極的支持の分析が共通している。

 

 安倍さんの資質が問われることも多く報じられてきた。お友達内閣、国会ではキレとヤジに議長から苦言を。民主党時代の失政を揶揄攻撃する品性の低さ。政権不祥事に「任命責任は私に」と口先ばかりの無責任さ。森友疑惑では自身や夫人の関与の否定が官僚に忖度を強い、その背後で一人の職員が自殺に追い込まれた。加計問題ではお友達依怙贔屓の疑惑に世論の七割が納得していない。9条改憲に執着し、事実を歪曲誇張してまで改憲根拠を放言してきた。

 

 今また「桜を見る会」不信が持ち上がった。第二次安倍内閣から費用は1.8倍、招待客は1.3倍に膨れ上がった。多額の税金で賄われる公的行事であるにも関わらず、自身の後援会招待者が800人以上と報じられると、その場しのぎの答弁が迷走している。あさましい公私混同ぶりに、市民団体が公職選挙法・政治資金規正法違反として安倍首相を刑事告発した。  
 共同通信社11月世論調査では内閣支持率が10月から5ポイントも下がったが、48%の高支持率を維持している。「次の首相にふさわしい人」にこれまで安倍さんだったが、今回は石破さんが僅差で上回った。それでも政権支持者は安倍さんを推す。「他の適当な人」になれない人とは、右に書き連ねたことをしてきた安倍さんよりもひどい人たちということだろうか。その逆ならいくらでもいるはずだが。

 

 三原じゅん子議員の独裁政権を肯定する相変わらずのおバカなツィ―トを放置し、野党に政権が移らず、自民党内の疑似政権交代ですら起きようとしない現状は深刻だ。政権交代のない政治は必ず腐る。有権者次第ではないのか。



 

サイト内検索

お問い合わせ先

9条の会さかい(事務局) 090-8729-3008