戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2019.2 No.23
多幸感をまき散らかされる責任
勤労統計不正が発覚しても、内閣支持率が45%代を維持する安倍政権。霞が関を巣窟とするこの手の不正に慣れてしまったかのような支持率に落胆す。
安倍首相はアベノミクスで労働賃金が上昇したと喧伝してきたが、不正統計を正してゲタを脱がせれば六年たっても伸び悩んでいるのが実態のようだ。政府は景気拡大の状況が戦後最長と公言するが、その実感を持てない国民の感覚の方がまともである。
「安倍政権の最大の罪は、世の中に根拠のない多幸感をまき散らしていることである。こんなでたらめな政治を容認する人々が国民の半分前後いること自体が国難である」と山口二郎氏(法政大)は断じる。
しかし、景気実感を持てない国民ではあるが、自らの生活に関与する政治に関心を失ってしまえば、このような不正自体の善し悪しに無感覚になる。その結果、安倍一強の長期安定政権を善しとして受け入れてしまう土壌ができあがる。それが内閣支持率に反映されている。多幸感を巻き散らかされる側にも相応の責任があると思わねばなるまい。
続・誰にも影響すること
厚労省の統計不正が批判を浴びている。この会報1月号で「生活扶助費引き下げ」を取り上げたが、その扶助費を恣意的に大きく切り下げたことにも統計不正があった。厚労省が2013年に生活保護費を削減した根拠が、2008~11年に5%近く物価下落したとするものだ。(東京新聞2月7日記事より)
フリ―ライタ―白井康彦氏(元中日新聞)は当時、この不自然さを調べるなかで計算偽装に気付いたという。物価指数をこの期間において別な計算式を使い、下落率を大きく算出していた。その結果、生活保護者の支給額が三年間で総額670億円削減され、都市部に住む四十代夫婦と小中学生の子ども四人世帯で減額が月二万円に及んだという。
生活扶助費削減が始まった前年の12年12月は、衆院選で自民党が「生活保護給付水準の原則一割カット」を政策の一つに掲げ、民主党から政権奪取した。政権与党の政策に沿うように操作したとみる白石氏。そうならば、憲法25条「生存権、国の社会保障的義務」から国民は見捨てられたことになる。
Tカ―ド懸念とマイナンバ―
日本人口の半数以上の6800万人が利用しているTポイントだが、レンタル情報や商品購入履歴が裁判所の捜査令状なくても警察に提供されているという。Tカ―ド運営会社「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」によれば、捜査への協力が社会貢献と言う。(東京新聞1月26日記事より)
提供されている情報は、氏名・生年月日・住所から、購入商品及びレンタル商品と店舗及び日時などと記事は推測する。捜査側からは、それらのデ―タで個人の思想信条や好み、性癖までが筒抜けに分かる。
この記事は、同様な情報を扱う図書館への取材も報じる。全国公立図書館945ヶ所への捜査機関から裁判所令状なしで照会要請は全館の二割もあり、その半数以上113館が求めに応じていた。その判断は自治体がするという。
識者は、Tカ―ド運営会社が漫然と個人情報を提供してきたのならば、愚かしい行為と批判する。会員のプライバシ―を守ることこそが社会貢献であり、プライバシ―の侵害にもなりかねないと指摘する。そして、これを「民間版マイナンバ―」になぞらえる。
マイナンバ―カ―ドの普及率は10%未満と進まない。その理由にプライバシ―保護への不安がある。個人番号と結びつける情報は行政に関わるものに限定されている。しかし、省令で拡大は可能であり、すでに金融資産がひも付きにされている。今後は健保など医療情報への拡大も検討されているという。
マイナンバ―もTカ―ド同様に、利用の記録が蓄積される。各機関毎に情報は分散管理されるというが、管理側の裁量次第で芋づる式に個人情報が手繰り寄せられる。どう扱われるかが不安だ。それは、情報の外部流出よりもはるかに大きいリスクだ。