戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2019.8 No.29
それでも改憲に執着するのか?
七月参院選の結果、自公と維新は改憲発議に必要な三分の二を割った。特に自民党は9議席も落として、単独過半数も維持できない議席となった。安倍首相にとっては、この選挙で何としてでも改憲発議に持ち込みたかっただけに惨敗の想いが募る結果ではなかったか。
安倍さんが憲法9条に自衛隊を明記する改憲を自身の任期中に達成したいという執着に反して、投票者はそう応えなかった。共同通信社が茨城選挙区で実施した出口調査では、改憲反対が47%で賛成の42%を上回った。自民党支持者でも反対19%、安倍さんと民意のズレは明らかだ。自民党候補者でさえ有権者に対して改憲を表明することが少なかったと報ずるメディアもあり、党内の改憲温度差が窺えた。
6月中旬の共同通信社世論調査でも、安倍政権下での改憲に反対が54%で賛成31%を大きく上回っている。アメリカメディアでさえ、この選挙結果に安倍政権に「改憲の根拠なし」と論評しているくらいだ。
主権者国民が望まない「改憲」、なぜ必要か国民に語らない「改憲」、なぜ「私の任期中」なのかを説明しない「改憲」、安倍首相の姿勢は憲法を私物化しているとしか国民の目には映らない。
表現の自由を委縮させないために
あいちトリエンナ―レ「表現の不自由展・その後」が八月一日開会三日後に中止に追い込まれてしまった。出展は「平和の少女像」や「9条俳句」など17展、政治色が強いなどとして美術館から撤去や公開が中止になったもの。それらに解説をつけて展示することで「表現の自由」を問いかけるというのが展示の趣旨だった。
しかし、開会すると主催者事務局に抗議が殺到し、放火予告まであった。松井一郎大阪市長がこの騒ぎに呼応した。河村たかし名古屋市長は視察後「どう考えても日本人の心を踏みにじるものだ」と大村秀章愛知県知事に即時中止を求めた。菅内閣官房長官も「補助金交付の決定・・・適切に対処したい」などと首長や政権幹部から展示会への問題視発言が相次いだ。
大村知事は、河村市長の中止要請に対して「表現の自由を保障した憲法二十一条に違反する疑いが極めて濃厚」と表明し、公権力こそ表現の自由を守るべき立場にあると反論した。
このまま中止になってしまうと憲法で保障された「表現の自由」が暴力と権力に屈したことが既成事実化されて、芸術以外に市民活動はじめ多方面での表現の委縮につながる深刻な問題だ。
それを憂慮した名古屋共産党市議団、日本ペンクラブ、憲法学者らは政治的圧力が検閲につながるとして抗議声明を出して再会を求めた。
八月十七日に有識者らが「表現の自由を市民の手に/全国ネットワ―ク」を立ち上げた。再開を求める署名活動を展開するために他の団体と連携するとした。憲法を護る市民の立場からはこの呼びかけに賛同する。
国民の知る権利がまた奪われた
森友学園疑惑の解明に世論の7割が納得できないとしている。今年三月、市民11人でつくる大阪第一検察審査会が佐川宣寿元財務省理財局長ら10人の文書改ざんに「不起訴不当」の議決を下し、法廷で糾弾しようとした。それを受けて大阪地検特捜部の再捜査であったが再び「不起訴」にして捜査を終結させてしまった。財務省でさえ佐川氏ら20人を処分している。それゆえ証拠は十分そろっているはずなのに、検察の結論には納得がいかないのは当然だ。
国有地を八億円の値引きで学園に売却した際の文書改ざんや安倍昭恵夫人の関与などを法廷で明らかになることが求められていた。この疑惑で不幸にも職員一人が自殺しているのだ。国民の知る権利が検察によって奪われた。これも政権への忖度かと思うとやりきれない