戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「9条の会さかい」発信 2022.11 No.68

2022年12月01日 10:51

なぜ急かす? マイナカード普及

 先月13日に河野太郎デジタル担当相は、唐突にもマイナンバーカードと健康保険証を一体化すると発表した。2024年の秋を目途に現行紙ベースの保険証を廃止するという。それはカードの取得率を上げるために国民皆保険制度を人質にとった「義務化」に等しい。保険証ばかりではない。24年度末までには運転免許証もカードとの一体化を検討しているそうだ。そもそもカード取得は「任意」であるにもかかわらず、その強引さが際立っている。

 医療現場からもマイナカードと保険証の一体化については批判が上がっている。新型コロナ対応で過重な負担を強いられている上に、マイナ保険証導入はさらなる重荷になるからだ。

 自治体はどうか。総務省は自治体ごとの取得率に応じて、地方交付金の配分に差をつけると言い出した。そうなると、財源不足を補う交付金を取引材料にされた自治体はカード普及に躍起にならざるを得ない。だから、義務でもない取得率向上の努力を自治体に押し付けるのは筋違いとの批判が上がるのだ。さらに、政府検討中の「デジタル田園都市構想交付金」にも、カード取得率が全国平均以下の自治体には受給申請できないようにしたり、配分額を減じるという。自治体を踏んだり蹴ったりする政府の横暴さが浮かび上がる。

 このように、国民と自治体の首根っこに縄をかけてまでしてマイナカードを普及させようとする政府の本音はどこにあるのか。
政府は「デジタル社会のパスポート」として住民票取得や確定申告、医療等におけるカードの利便性を喧伝しているが、それらがあえて便利だとは思われない。現状、取得率は五割、国民の半分はカード取得をしていない。理由は、紛失や盗難の心配、組織的な個人情報の外部漏洩など。もっと本質的には、政府によって個人情報がどのように扱われようとするのかが不透明であり、不安と不信感が強いからだ。

 

 

利用規約に同意する前に 

 マイナカードが交付された後、カードを保険証として利用するには政府サイト「マイナポータル」にアクセスして保険証利用登録をする必要がある。その際に、ポータルサイト利用者は「マイナポータル利用規約」に同意しなければならないのだが、この「利用規約」に注意すべきと指摘する声が上がっている。しかし、ほとんどの利用者はサイト画面に誘導されながら、利用規約を読まず判断もせずに「同意」ボタンを押しているのだろう。

 この利用規約の問題点については、ネット上で「マイナポータルの利用規約」「静岡県保険協会HP」「山口県医師会会報・第1941号」などで読むことが出来る。これから利用登録しようとする際には、事前に読むことを勧める。

 問題が多い条文のいくつかを取り上げる。第3条には、利用者がシステムから受けた損害について、デジタル庁は一切の責任を負わないとある。第23条では、政府・デジタル庁が利用者の同意を得ることなく、都合のよいように変更できるとなっている。利用者は変更した規約に否応なく承諾させられる。第4条では、自治体が管理している住基ネットの個人情報をマイナポータルに連携させて、内閣総理大臣が開示請求できるようになっている。住基台帳は世帯ごとに編成して管理されているから、開示情報が家族に広がることもあり注意を要す。

このように、利用者に不平等な利用規約への同意を求める政府の意図は何か。政府が国民一人ひとりの顔写真と預金や病歴など個人の高度な属性を握ることができるマイナカード、それは監視社会への基盤整備に大きな役割を持たせることになりはしないか。個人の妄想であればよいが、顔認証AIと防犯(監視)カメラを連動させた監視社会になりはしないか。国民監視の基盤が構築された社会とは、為政者にとって魅力的であり、専制政治を生み易い統治環境を作り出すのではとの強い不安を覚える。



談合の汚れ残して五輪果つ 昌利       

壁に耳あり障子に目あり監視社会に住むところなし 蒼果

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