戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2022.8 No.65
なぜ?安倍国葬
なぜ安倍晋三氏が特例的に国葬の対象になるのか。史上最長の首相在任期間と華々しい外交が国葬に値するとの岸田首相の説明だが、それは主観的評価に過ぎない。国葬決定に際して、内閣府所管の範囲を超えていること、法的根拠がないこと、国葬費の支出が国会の審議を経ていないことなど国葬反対の理由は多い。
安倍政権の下で私たち国民はどれほどの恩恵を受けただろうか。原油価格や原材料の世界的な高騰が進んでいる。それに起因して、国内物価の値上がりを増幅させているのが円安の進行だ。アベノミクスがもたらした副作用が国民生活を圧迫し始めている。非正規雇用の拡大によって様々な格差を社会に蔓延させた。モリカケサクラと蔑称されるほど安倍氏にまつわる特異な疑惑の下で、虚偽答弁を繰り返し、権威に寄り添う者と添わない者との分断を生み、自殺に追い込まれる犠牲者も出た。否定的な事例の一端を挙げてもその影響は看過できないほどに深刻だ。政治家とは結果責任が問われる人たちを指す。それ故、私たちは承服し難い。
国葬とは主権者たる国民の同意に基づいて為されるべき儀式であろう。世論の半数以上が反対している国葬に、大多数の国民は弔意の強要と覚えるであろう。国葬が公表されて程なく、当会は境町教育長に教育現場における弔意強制をしないよう要請した。憲法と教育基本法の遵守を願うからである。
なぜ?原発政策転換
岸田首相は今月二十四日に原発の新増設も含めた検討を突如表明した。岸田首相の朝令暮改的政策は「新しい資本主義」ですでに馬脚を露わにしたものだが、これは彼の政策の範囲内のことだ。しかし、原発政策の方針を180度転換したとなれば一政権の範囲を逸脱しており、事は重大である。
政府が示した転換方針が原発の新増設、最長60年運転期限の延長、新たに7基原発の再稼働等が含まれていることに驚く。岸田首相は転換の理由について、ロシア侵攻などで電力需給がひっ迫していることだと説明する。しかし、原発の再稼働や増設のプロセスと国際紛争の成り行きは時系列的に噛み合うはずもなく、論理が破綻している。
先ずは首相としての責任は、福一原発事故による被災者避難者たちへの配慮をすべきだがそれがない。次に、核のゴミ処分と核燃料サイクル開発が行き詰っている現状や再生可能エネルギーの将来性に目を背けた方針である。
なぜこのような方針に転換したのか。先の選挙で安定的な政治環境を手にした岸田首相の驕りではないか。解釈改憲により歴代政権の方針を転換した安倍政治の踏襲と映る。
わかりにくい「平和」の状態
それを選んだ 茨木のり子
退屈きわまりないのが 平和
単調な単調なあけくれが 平和
生き方をそれぞれ工夫しなければならないのが 平和
男がなよなよしてくるのが 平和
女が溌剌としてくるのが 平和
好きな色の毛糸を好きなだけ買える
眩しさ!
ともすれば淀みそうになるものを
フレッシュに持ち続けてゆくのは 難しい
戦争をやるより ずっと
見知らぬ者に魂を譲り渡すより ずっと
けれど
わたくしたちは
それを
選んだ
この詩に触れたとき、今月亡くなった精神科医中井久夫の著「戦争と平和 ある観察」と重なった。「戦争が『過程』であるのに対して平和は無際限に続く有為転変の『状態』である。だから、非常にわかりにくく、心に訴える力が弱い」とある。
平和ボケが許容されている状態はまだ良い。だが、私たちの関心が薄れるほどに、腐敗し始める平和の中から戦争の種が芽を出し始める。
国葬の世論二分して秋の風 昌利良心の自由侵しむ国葬は人の治むる国となりしか 蒼果 |
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