戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2024.11 NO.91
現行保険証廃止の愚策
12月2日期限にて現行保険証の新規発行が停止される。立憲民主党が現行保険証の存続法案を単独提出した。なぜ他党と共闘を組まなかったのか本気度を疑う。さらに残念なのは国会審議も進んでいない。なぜ現行保険証を廃止する必要があるのか納得できる説明が政府からは一向に聞かれない。なお、「資格確認書」や「資格情報のお知らせ」等が届いても、「現行保険証」は絶対に捨ててはいけない。有効期限まで最長1年は使えるし、医療窓口でのトラブル発生時には現行保険証があれば解決すると識者は注意を促す。
マイナ保険証一本化のために現行保険証を廃止するとの決定は、2022年10月に当時の河野デジタル担当相のトップダウンによってなされた。ここからが迷走の始まりとなった。マイナ保険証の強制だと批判を浴びた。そこで未保有者には「資格確認書」を交付することになったが、マイナ保険証にまつわるトラブルの多発が現在に至っても収束せず、保険資格を確認するための様々なカードや文書が乱発された。制度設計の甘さと政府の場当たり策が医療保険制度を混乱させている。
マイナ保険証導入には、2014年から現在まで少なくとも8879億円の税金がつぎ込まれていると東京新聞(11月15日付)が集計を報じている。この内、5400億円余りの巨費がマイナポイント付与等の普及策のために投じられた。だがその意図に反するが如く、利用率は15%程度と低迷したままだ。最近では「資格確認書」類のものがマイナ保険証保有者にも送付されている。さらに、マイナ登録を解除する保有者も出始めているというではないか。
現行保険証さえ存続させれば、このような労力と税金の浪費も生じなかったのではないかと考えざるを得ない。保険組合をはじめ医療関係者そして国民からも存続への要求が度々上がっていたはずだ。まさに愚策の極みである。
改憲とSNS
総選挙で与党議席が過半数割れしたことから、憲法審査会会長の座を野党立民が得て枝野幸男氏が就いた。自公維新など「改憲勢力」が後退したことで、従来の「改憲ありき」論を排除して、公平性の問題を抱えた改正国民投票法の見直しと、新たな問題として浮上したSNSへの対応を議論して欲しい。
SNSが投票動向に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。都知事選挙では、広島県安芸高田市の前市長で関東では無名的存在の石丸伸二氏が現職小池氏、蓮舫氏に次ぐ得票数を獲得した。アメリカ大統領選では、数々の罪状で訴追されているトランプが熱狂的支持で圧勝した。直近では、兵庫県議会から不信任を突き付けられて失職した斎藤元彦知事がまさかの再選を果たした。これらの背景には、SNSによる「造られた候補者像と選挙戦構図」の拡散による支持層の拡大が見えて来る。
SNSとは真偽が混在して情報が飛び交う世界である。SNSを駆使して拡散する選挙戦術では、恣意的かつ圧倒する情報量に有権者が呑み込まれて、意思決定が発信者の思惑に支配され易くなる。前述した選挙結果は、まさにそうした状況の下で起こった現象だと思わざるを得ないほど常軌を逸している。
このSNS戦術が国民投票までをも席巻し、再現されることになろうと強く懸念する。自民党が掲げる改憲原案の「9条」には自衛隊明記と自衛権行使の優位性、「緊急事態」時における法令の一時凍結とそれに代わる政令によって行政権の拡大強化が盛り込まれている。それ故、日本を取り巻く安全保障環境の厳しさを誇張扇動したSNSが拡散されたならば、改憲の達成などは容易に手中に収まることになろう。
この国を誤った道に導かぬように、有権者はSNSと一定の距離を置き、情報リテラシー(情報を読み取り、発信能力)を高めなくてはならない。そのように考えさせられる選挙光景だ。
定時制廃校の碑や秋時雨 昌利
制度とは酷なものだと怒りあり後期高齢者貼られし日に 蒼果