
戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2025.6 No.98
核兵器の抑制を下げる日本
「あの攻撃が戦争を終結させた。例えにはしたくないが、広島・長崎と本質的には同じ。攻撃が戦争を終結させたんだ」と成果を誇示し、原爆投下を引き合いに空爆を正当化したトランプ大統領。米国内では「原爆投下正当論」に一定の支持があり、トランプ発言も同根だろう。
この発言は被爆で苦しんでいる人たちを傷つけた。被団協はじめ市民団体、そして広島や長崎の自治体も一斉に非難の声を上げた。当然な反応である。野党と公明からも非難が上がるが、日本政府は黙認を抜く。このままでは国際社会から日本は核使用容認したと受けとられよう。さらに、核保有国の核使用への抑制力を削ぐことにもなろう。
黙認の背後には、米国核傘下に依存するという意識があろう。しかし、それを押してでも原爆の非人道的な被害をこうむり、苦しんでいるのは被爆者だ。なぜそこに立ってトランプ批判が出来ないのか情けない。トランプ米国に対する日本政府の卑屈さが滲み出ているとしか言いようがない。
健康保険証を復活せよ
健康保険証は昨年12月2日に交付を終了した。医療保険組合や医療機関などから存続が求められたが、政府はこれに耳を傾けることはなかった。
マイナ保険証(ICチップが貼られたマイナカード)は昨年12月の時点で約7600万と全人口の6割強である。しかし、医療窓口での利用率は30%未満と低迷している。一方で登録解除申請が10万件近くに増えている。利用者とってマイナ保険証には利便性が感じられず、様々なトラブルも後を絶たたない。それが数値に表れている。
マイナ保険証登録は建前上は強制ではない。未登録者には資格確認書を交付して、保険証同様に医療行為が受けられる補完措置がとられている。
ところが大きな問題が浮上した。総務省によると今年度にはカードに貼られたICチップの有効期限(5年)切れと、カード本体の有効期限(10年)切れが合わせて2780万枚に上る。この膨大な枚数の更新手続きに、自治体や保険組合は混乱と忙殺を余儀なくされる。渋谷区や世田谷区ではこれを回避するために、マイナ保険証登録の有無にかかわらず、国保加入者全員に資格確認書を配布することにした。厚労省もそれを容認しており、今後は人口集中地域の自治体に飛び火して広がって行くかも知れない。
厚労省は既に後期高齢者や要配慮者には、マイナ保険証登録の有無にかかわらず資格確認書を交付することも認めている。資格確認書は従来の保険証に内実同等である。ならば保険証を復活させる方が合理的だ。少なくも政府にはその責任がある。
生きる権利と質の保証が優先
国が2013年~15年に生活保護基準額を引き下げたのは「違法」として、利用者が減額処分の取り消しを求めた上告審裁判。6月27日、最高裁は、厚労相の判断に「裁量権の逸脱や乱用があり違法」として減額処分を取り消した。
戦後最大となった減額措置の背景に着目した。下野していた安部自民党は2012年の衆院選の公約に「生活保護見直し 生活保護費1割削減」を掲げた。当時、お笑い芸人の親族の生活保護費の受給(不正はなかった)が取り沙汰された。自民党は有権者のうっぷんをすくい取るかのように、「手当より仕事」「不正受給者には厳格に対処」が選挙戦で飛び交い、政権に返り咲いた。
厚労省の有識者会議では、3年間で670億円の削減を誇示するような目標が提示された。厚労省は「デフレ調整」に独自指標を作り、テレビやパソコンなど高額製品の価格下落率を導入して減額幅を決めた。専門家の知見も取り入れず、保護者の生活品目からかけ離れた恣意性が裁判で指摘された。
自民党公約に忖度した減額ありきの生活保護行政からは、自己責任論的な社会風潮の中で生活保護が偏見に晒されてきたように映る。国には基準額を決める権限もあるが、憲法25条2項は国民の生活保障への責任も国に課している。生存権が時の政権の思惑に左右されてはならない。
夏つばめ沐浴をして水張田 昌利
年一度せめて映画の楽しみを奪いとらむか生活保護は 蒼果