戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「9条の会さかい」発信 2025.7 No.99

2025年08月01日 00:00

今だからこそ「戦後80年談話」を

 戦後80年を迎える今年は、内閣総理大臣による談話が発表されるのかが関心事である。戦後談話は50年村山談話に始まり、60年小泉談話、70年安倍談話が発表されて来た。これら歴代談話を読み返せば、先の戦争への歴史認識と日本が犯した侵略戦争の反省と謝罪がそれぞれの時代と首相の個性を反映した言葉として織り込まれている。

 国際社会の現状は、ロシア・ウクライナ戦争の終結が見えず、イスラエルはガザにジェノサイドに等しい攻撃を強行している。また、イランへの空爆にアメリカをも巻き込んだ。直近ではタイ・カンボジアでの国境衝突が勃発した。これまさに「戦中」の様相だ。自衛隊と米軍の一体化が進むなかで「台湾有事」に備え、沖縄南西諸島には軍事要塞基地が張り巡らされ、一旦事が起これば日本は参戦を余儀なくされる事態に追い込まれる。まさに「戦後」は「新しい戦前」に変貌している。

 参院選で自民党は少数与党に没落した。背景には排外主義民族主義を標榜する新興政党の台頭躍進とそれに熱狂する大衆があり、ある種の社会現象化している。このままではこの国は益々右傾化を深めることへの強い危惧を抱かざるを得ない。

 それ故、石破首相本来の言葉で綴る「80年談話」が必要だ。今だからこそ再び戦争の惨状を国民に負わせない強い決意を表明して欲しい。

 

「石破辞めるな」エール

 参院選で自民公明与党は少数与党に転落した。自民党内からは早くも石破降ろしの声が上がった。ところが石破首相の窮状に、首相官邸前で多くの市民が集まって「石破辞めるな」「石破頑張れ」「石破戦え」などと書いたプラカードを持ってエールを送る人たちが現れた。しかもこの石破激励デモ参加者の多くは自民党支持者ではない。

 エールの背景には首相後継に意欲を見せる右派議員の台頭と、それによって生じる自民党のさらなる右傾化への懸念がある。参院選では排外主義を標榜した参政党の躍進に警戒感を募らせる。このままでは少数与党脱却のために補完野党維新や国民に加えて、親和性の高い新興政党を抱き込めば一大右派勢力となろう。国家主義や排外主義的色彩の強い政権出現に対する不安と反動に映る。

 それ故、自民党内右派勢力へのカウンターとして石破首相続投支援エールである。石破氏はかつて国防軍やアジア版NATO構想に言及した党内タカ派の一人である。一方で本来の保守性を備えた政治家でもあり、安倍菅岸田政治で横行した使う言葉を歪めたり、無責任さで弄んだ政治家とは一線を画す。そんな石破首相が右傾化への防波堤にならんことを期待されているのだから興味深い。

 他方でこのような市民の声を「ご都合主義だ」と切り捨てる識者やジャーナリズムも散見される。果たしてそうだろうか。選挙では有権者の選択肢が限定される。小選挙区制の下ではなおさらだ。例え非自民支持層であっても、政治の右傾化を阻むための「石破辞めるな」エールならば評価に値しよう。

 

石川昌利先生のご逝去を悼む

 石川昌利先生が7月24日にご逝去されました。85歳でした。先生は当会発起人の一人です。先生とは7月7日にご自宅で歓談したのが最後でした。このようなことになるとは思いも寄らないほどお元気だっただけに、今もご自宅で俳句つくりに勤しまれているような感覚を覚えます。

 会報への俳句は2021年2月に始まり、現在も続いています。それらの句は力強く、瞬発力を効かせた直球のような爽やかさが感じられます。

 先生は教師を志して高校大学を苦学して卒業されました。長年教鞭を執られたなかで多くの生徒からも親しまれました。先生の足跡からは正義感が強く、人への優しさが浮かびます。その謙虚な人柄に惹かれます。
 先生は9条が時の権力によって揺るがされていることを憂慮され、その心情を句に織り込みました。その思いを私たちに託されたのでしょう。
 石川昌利先生のご冥福をお祈りします。  合掌

 

 

9条の息絶え絶えや酷暑かな    昌利    

日の火照り残れる朝に師は逝きし生を刻めり庭の夏草   蒼果 

サイト内検索

お問い合わせ先

9条の会さかい(事務局) 090-8729-3008