戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい」発信 2026.4 No.107号
平和主義への挑戦的改憲案
高市首相の改憲前のめりが際立っている。維新のアクセルも働いている。自民党は2018年に「改憲4項目」素案を明示している。今後の与党内協議を経てどんな改憲原案条文となるか、本音は9条と緊急事態条項だろう。
現行9条に対して歴代の政府は「自衛隊は専守防衛(自国が攻撃された場合に)上の個別的自衛権(独力で)を行使するための実力組織」との見解を堅持してきた。自衛隊は脅威を与える軍隊に相当せず、自衛は国際法上の正当行為であり、9条に抵触しないと位置付けた。しかし、2014年解釈改憲と15年「集団的自衛権行使を容認する安保法制」の立法化によって自衛の範囲を広げた。「存立危機事態」は自国への攻撃がなくても、自国が存立の危機に陥るならば自衛ための交戦権を容認した。自民案9条「自衛隊、自衛措置」明記に改憲されたならば、自衛隊法はフルスペックの集団的自衛権が可能に法改正されよう。好戦的な米軍と一体化した地球規模的範囲に拡大されよう。そこに平和国家日本の姿はない。
「緊急事態条項」とは大規模災害やテロ内乱等の混乱が国家的危機に関わる場合、法律に代わって内閣が発令する「政令」によって統治する。国民は政令に従う義務を負う。条項は国会議員の任期延長も可能とする。議員任期の長期化と政令による統治は独裁政治の温床となる。
最も懸念すべきは改憲9条と緊急事態条項の親和性だ。集団的自衛権は強力な自衛隊の確立を要求し、徴兵制を誘導するからだ。まさに平和主義への挑戦と映る改憲だ。
防衛費増強の行き詰り
4月7日、26年度予算が成立した。総額122兆3092億円は前年度当初予算の7兆円増で過去最高となった。この内、地方交付税と国債費に52兆円、社会保障費関連に39兆円が費やされる。残る31兆円が政権が使える政策費だ。一方で政府の債務残高は対GDP比で200%を超える借金大国となっている。高齢化で社会保障費も膨張し続ける。財務省は今後4年間に国債費(借金返済)は31兆円から41兆円へと急増し、市場金利の上昇次第でさらなる膨張が見込まれると試算する。
これほど財政が逼迫しても高市政権は防衛費を最優先する。過去最大の9兆353億円が計上され、12年連続過去最大を更新する。高市氏が公約した消費税減税の実現性は不透明だ。「責任ある積極財政」と首相が声高になるほど市場は円安と金利高に反応する。脆弱な財務体質では国債の増発に頼れず、減税自体が疑問である。
「対GDP比2%」は23~27年度防衛力整備計画において、22年度GDP560兆円ベースで27年度は11.2兆円となる。ところが高市政権下での整備計画(28~32年度)では、財務省試算による27年度GDP710兆円をベースにするとも防衛費は14兆円に増大する。防衛費は不健全な財務体質の下で行き詰り、既に防衛特別所得税を設けて国民に軍拡を加担させている。
軍拡の背景には中国脅威論がある。対中国軍拡競争に固執している。しかし、冷静に日中国力の現状を見れば、経済力と科学技術水準そして軍事力においてアメリカと競うほどに成長した中国を相手に、どれほど虚勢を張ったところで日本の劣勢は明白だ。この現実を認識出来ない政権こそ危険ではないか。今こそ外交重視に切り替えて、悪化する対中関係の改善を最優先すべきだ。
ここまで堕ちたか!「殺傷武器輸出解禁」
政府は殺傷武器輸出の全面的解禁を決定(4月21日)した。武器禁輸策は戦後日本の平和主義の根幹を成してきただけに「ここまで堕ちたか!」という嫌悪感がわく。
1976年三木内閣は「武器輸出三原則」を掲げ、「国際紛争を助長することを回避する」として全面禁輸とした。しかし、83年中曽根内閣による例外的措置以降、小泉、安倍、岸田内閣にて段階的に防衛装備品の輸出緩和と拡大が進められて来た。それでも殺傷武器には抑制的だったが、高市政権に至り事実上の全面的解禁に踏み切った。日本製武器によって人が殺される現実味が帯びて来た。高市首相は「平和国家としてのこれまでの歩みと基本理念を堅持する」というが、平和憲法にとどめを刺し、先人たちの努力と国民の思いを踏みにじる行為だ。
この決定は周辺国との軍事的な緊張を高めて軍拡競争を加速させる。早速中国が「深刻な懸念」と警戒感を露わにした。日中関係のさらなる悪化が危惧される。
最大の問題は政権の一存で決められ、国会は関与出来ないことだ。武器輸出は他国の戦争への加担にも繋がる。国会が歯止めが出来るような仕組みが不可欠である。
春愁ひ原尋ねればウクライナ 昌利
春眠にあかつき覚えず雨風に散りし花あまた憂きことぞ知る 蒼果