戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「9条の会さかい」発信 2026.3 106号

2026年03月23日 19:07

日本国憲法の原則

 与党が改憲発議を加速する背景には、高市首相が施政方針演説で述べた「どのような国を創り上げたいのか、その理想の姿を物語るものが憲法だ」があると思われる。しかし、遺憾ながら高市首相の見識は、日本国憲法が立脚する近代立憲主義の原則から外れていると言わざるを得ない。憲法は国という器を創るものではなく、理想を語ることでもない。 

 近代立憲主義はマグナカルタ(英)、独立宣言(米)、人権宣言(仏)等、時の国家権力と闘った人間たちの権利獲得の歴史的経緯の中でつくられて来た。それは「憲法によって国家権力を制限し、個人の人権を保障する」、つまり国家権力から国民を守るように創られたものだ。特に日本国憲法においては、国民だけでも310万人もの犠牲者を出した先の大戦への反省を込めて、憲法前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」と宣言した「平和主義」を強調している。
 この「政府に二度と戦争をさせない」を徹底させるために、憲法9条が国民を国家の戦争の道具にさせないと歯止めをかけている。近代立憲主義は個人の権利と尊厳を保障するとしているが、日本国憲法はさらに憲法前文と9条によって平和の裡に生きる権利「平和的生存権追及の権利」を獲得しようとしている。
 併せてこの憲法を政府に守らせようと努力すべきは主権者国民であるが、それを怠れば憲法も所詮絵に描いた餅に過ぎない。それ故、憲法12条が「この憲法が保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と忠告している。

 

 

それでもこの戦争に加担してはならない

 この原稿を書いている時点で日米首脳会談が行われている。イスラエル・米国とイランの戦争が泥沼化する中でのトランプ・高市会談は、国民のみならず全世界が注目していることは容易に想像がつく。
 これに先駆けて国会では「米国とイスラエルの先制攻撃が国際法を無視した侵略として国際犯罪に該当するか、法的評価を明確にせよ」との共産党議員が繰り出す追及に、高市氏は評価を避け続けた。法に違反していると答弁すれば、トランプとの交渉にて選択が束縛されるからだ。しかし、この先制攻撃を「正当」とする選択の余地はないとの指摘は多い。
 2015年安保法制を巡る国会審議で当時の安倍首相は「先制攻撃した国に対する後方支援はありえない」と答弁している。集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」や「重要影響事態」(いずれも日本への危機回避のために同盟国と執る軍事行動)についても該当するとは言い難い。3月19日付東京新聞で早稲田大水島朝穂教授は、これらの危機事態に無理に当てはめれば「違憲性のある集団的自衛権」にすら「違反」することになり、政府自らがかけた歯止めさえ踏み外す行為によって、際限ない武力行使に広がる恐れがあると指摘する。
 ホルムズ海峡封鎖が続けば日本経済は苦境に陥り、国民生活もひっ迫しよう。自衛隊派遣を拒否すればトランプからどんな見返りを要求されかのリスクもあろう。それでもこの戦争に加担する危険は絶対に避けるべきであり、苦難があっても戦争よりはマシだ!

 

報奨金で通報を誘導する制度を撤回せよ

 茨城県は新年度に外国人の不法就労を通報した者に報奨金を出すという全国初の制度を創設すると発表した。県では農業分野を中心に不法就労者が多く、退去件数がここ数年は全国最多となっているという。 
 一方でこの制度への批判と撤回を求める声も上がる。報奨金で通報を募ることは、県民自らが品位を貶めることを誘導するものであり、倫理的観点に則しても自治体として成すべきことではなかろう。
 人権問題に取り組む団体が制度撤回を求めて「住民を密告者に仕立てるな」と声を上げた。農家でつくる団体も「県民が外国人を疑いの目で見ることに繋がり、不安に陥れる。報奨金目当ての通報や互いを監視し合う社会を助長しやすい」として地域社会への悪影響を問題視した。前川喜平氏(元文科省事務次官)は学校が密告を生む場となりかねず、外国人の子供が就学できない状態を生み出す危惧を訴えた。
 監視密告が制度化されたならば息苦しく陰湿で不健全な社会に陥ることになる。県民として強く反対する


 

 

蝌蚪(かと)の帯切れて命の生まれけり    昌利    

梅も散り桜咲けども彼の地にてほむら立つこそ春は来ぬまま    蒼果

 

 

 

※蝌蚪(かと) オタマジャクシ 春の季語

 

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