戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい発信」 2018.4 No13
自民改憲案と現行9条死文化
自民党の9条改憲案がまとまったようです。現行9条1戦争放棄や2項戦力不保持はそのまま残します。さらに「9条二」を新しく加えて
- 1項 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
- 2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国家の承認その他の統制に服する。
この改憲案が通れば、「自衛隊」を憲法に謳いこむことで自衛隊の活動が際限なく拡大する深刻な懸念が出てきました。
従来政権では「集団的自衛権の行使は憲法の改正なしには不可能」という立場でした。まだ現行9条が障壁になっていて、自衛隊が同盟国軍と一体で海外での軍事行動を妨げています。それゆえ、2015年に強行採決した集団的安保法制を2項で合憲化しようとしているのです。
さらに、専守防衛の立場から「自衛のための必要最小限度を超えない自衛力は合憲だが、超えると戦力となり違憲」とする従来の政府解釈の制約もこの条文案にはありません。後から加えられた条文が前の条文を優先する法解釈の一般則が現行9条を死文化させることになります。
安倍政権の米国追随を鮮明にした防衛政策では、米国の戦争への加担を余儀なくされる危険が極めて高くなります。歯止めは現行9条です。
改憲資格なし安倍疑惑
森友文書改ざん事件の中心人物、佐川元理財局長への国会証人喚問後の世論は、7割以上が佐川証言に納得できないと答え、安倍首相に責任有りも6割以上に上った。
安倍政権の長期化によって行政府への権力集中がもたらした弊害だ。政権の長期化は安定よりも腐敗に変質したようだ。その政権になびく官僚が国民に背を向ける宿痾は救い難い。国家の民主的制度が深刻な事態になっている。結局、社会が健全さを維持できるのは国民の意識の高さに依拠することだ。
無知と誤解の果てに
朝鮮半島はトランプ政権の発足以降緊迫の度を増している。南北および米朝対話の機運の中ではあるがその行方に不安は大きい。そんな今、このドキュメント『我々はなぜ戦争をしたのか』 (岩波書店2000年3月)を読み返した。
ベトナム戦争当時の米国と北ベトナムの戦争指導者同士の対話が1975年停戦から22年後の97年にハノイで持たれた。ベトナム人300万人、米国人5.8万人の戦死者を出した戦争、なぜ回避できなかったのか。それを探る対話だった。
東西冷戦時代、トル―マン以降の米国大統領は中ソ大国の覇権に恐々としていた。南北ベトナム対立の中、米国は南ベトナムを支援することで東南アジア全体の共産化を食い止めようとした。北ベトナムの背後で中ソが手を携えて覇権拡大することを恐れたからだ。いわゆる「ドミノ倒し」恐怖症である。
一方、北ベトナムは米国傀儡の南ベトナム政権の圧政から国民を解放して、民族の独立と統一を掲げた抗争を展開していた。中ソから指示命令される関係にはなかった。南北ベトナム対立は米国の介入で戦争へと拡大した。
中ソ対立は米国が東南アジアの「ドミノ倒し」を懸念する頃には顕在化していたはずだが、米国はそれをベトナム戦略に活かせなかった。ベトナムの目指す民族統一、米国の「ドミノ倒し」恐怖症、無知と誤解が両国の戦争目的の齟齬による泥沼化と惨状を生んだ。
対話は無知と誤解を排除し、戦争を回避する。歴史に学んでほしいと切に願う。