戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい発信」 2018.5 No14
沖縄に今も強いる犠牲
憲法フェスティバル5月3日水戸。二人の講演者から、沖縄戦民間人戦争被害者の国家賠償訴訟と宮古島軍事基地化の報告を聞きました。
瑞慶山(ずけやま)茂弁護士の報告です。県民60万人中15万人の死者が出た凄惨な沖縄戦。多数の後遺症障害者がいて、精神障害も多発しました。沖縄戦とは、日本国が国体(天皇制)の存続を引き換えにして、消耗戦を強いた戦闘でした。県民を「捨て石」にした戦争、なかでも日本軍による住民虐殺、強制集団自決、壕からの強制排除、幼児殺害などは無残でした。
このような戦争被害者への国の援護と戦争責任を法的に追及するために、「沖縄戦国賠訴訟」を提訴して闘っております。訴状は基本的人権侵害、国の不法行為責任、法の下の平等(民間人への補償差別)、アメリカ軍の国際法違反(無差別攻撃)です。地裁と高裁は門前払いであり、現在は「正義公平の原則」に反した憲法違反として上告中です。これから分かることは、今後日本が戦争で民間人が死亡や負傷しても補償されるとは限らないと瑞慶山弁護士は話します。
「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」清水早子さんは、宮古島で海女さんをしている方です。宮古島は戦時中、日本兵3万人が入り込み、飛行場建設に老人子供までが強制労働に駆り出されました。島内には13か所の日本軍慰安所があって、2008年にその犠牲者を慰霊する祈念碑を建立しました。現在では中国台湾からも5万人の観光客が訪れて賑わっています。
そんな宮古島ではこの二年の間、軍事基地化が顕著になっています。800名部隊基地と弾薬庫、射撃訓練場等の建設が進められています。防衛省は、尖閣防衛と中国の海洋進出を見据えて、宮古島〜沖縄本島間の公海上を両側から挟んで睨むミサイル防衛強化とレ―ダ―基地を増強した防御体制を構築するようです。
尖閣諸島海域での漁業も平穏に出来ているなかで、島の基地化は軍事的緊張を高めると清水さんは指摘します。間違って戦闘でも起これば島民が真っ先に危険に晒されます。
このような平和的生存権の侵害に対して、自衛隊明記の自民9条改憲案が成立すると違憲訴訟が出来なくなると清水さんは憂いを示します。
ホトトギスの手口改憲
5月3日、東京新聞の社説「平和主義の『卵』を守れ」に目を留める。ホトトギスはウグイスの巣に卵を産みつけてウグイスに育てさせる。孵化が早いホトトギスはウグイスの卵を巣から蹴落として成長する托卵鳥である。
これを自民9条改憲案に置き換える。現行9条①戦争放棄②陸海空軍戦力不保持と交戦権否認はそのままにして9条二項を新設する。法律は後から追記された条文が優位性を持つ。
自民案9条二項①前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高指揮監督者とする自衛隊を保持する。②自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
するとどうなる? 二項は「前条の規定は・・・妨げず」と条文の始まりから現行9条の除外を明示した。さらに、「必要最小限」の文言もなく、自衛権行使の範囲にも制限がないので集団的自衛権の行使も入る。さらに、自衛隊の統制は「国会の承認その他」と国会以外の介入も許す余地を残している。合憲化された自衛隊は、増強拡大かつ同盟国軍との海外行動をも可能にする。
9条の巣に二項を産みつけて現行9条を蹴落して壊す。その後、自衛隊はいったい何に成長するのか? 杞憂だと侮れまい!