戦争の過ちを二度と繰り返さないために
「9条の会さかい発信」 2020年3月 No.36
コロナ差別の中で
さいたま市は幼稚園や保育園、放課後児童クラブに備蓄マスクを配布した。ところが、朝鮮中級学校幼稚部は除外された。地方公共団体は国籍や人種を問わず、地域住民の全ての健康と命を守る責務がある。これを放棄した市に対して抗議が相次ぎ、マスクを配布するに至った。
愛知県ではクルーズ船のウィルス感染者を受け入れた医療機関に「外国人に税金使うな」「中国人、韓国人を追い返せ」差別的電話が相次いだ。大村知事は差別に断固対抗すると表明。
関東大震災ではデマによって多くの朝鮮人が殺害された。東日本大震災でも外国人危険視がネット上に噴出した記憶がある。根底に隣国の人たちへの差別偏見があり、災害によってこの悪しき社会現象が再燃している。
欧州でもアジア人差別が横行。移民の米国ニューヨーク市では感染拡大のさなか黄色人種へのヘイトクライムが噴出している。デブラシオ市長はヘイトクライムへの強い抗議声明を発し、『アジア系のみなさんへ。ニューヨークはあなた方の味方です』と呼びかけている。
トランプ政権は中国を名指し、感染源責任論で攻撃している。国内感染急増失策非難の矛先を国外に向かわせる思惑が醜い。
浜矩子氏(同志社大)はアイルランドのバラッカー首相の演説『中国やスペインやイタリアの皆さん。我々はあなた方とともにいる。これから来るものの影のなかで生きていく皆さん。我々はあなた方とともにいる』を紹介し、今は全人類にこう呼びかける時だと説く。
安全と自由を引き換えに
新型ウィルス感染の拡大が治まらず息苦しい。3月13日成立した改正新型インフルエンザ特措法は、緊急事態宣言発令により個人の権利を制限することが可能となる。
この特措法の功罪を見極めよう。民主主義国家においては、安全のために自由をどこまで犠牲にして良いのかという視点が必要だ。自治体の外出自粛要請が相次いでいる今、自粛ムードが蔓延して「空気を読め」との同調圧力を強く感じる。国難と称して発令される政府や自治体の強制力を無批判的に容認し、肯定する世相になるならば危機である。
「緊急事態条項」の加憲は自民改憲案の一つだ。緊急事態が体験感として国民に定着したならば、それを好機として改憲への舵を一気に切り始めようとする政権の思惑に注意が要る。
赤木さんの叫び
「週刊文春」3月26日号、森友疑惑で二年前に自殺した近畿財務局職員赤木俊夫さんの手記や遺書が公開された。同時に、赤木さんの妻が国と佐川宣寿元国税庁長官を国家賠償法で提訴した。「夫の死を決意した本当のところを知りたいと思っています。夫が死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか。」と妻は提訴への思いを明かす。
国有地売却問題が明るみに出た十日後の2017年2月17日、安倍首相の「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」答弁から、当時理財局長佐川宣寿氏による一連の改ざん指示が始まった。赤木さんの遺書からは新事実が出たが、安倍首相は答弁との関連性を否定、麻生財務相も再調査を拒否する。「二人は調査される側で、再調査はしないと発言する立場ではない」と妻は二人の姿勢を厳しく非難。
文春のグラビアには自死直前の手記だろうか「これまで本当にありがとう ゴメンなさい 恐いよ 心身ともに滅いりました 義母さん ゴメンなさい 大好きなお母さん」文字が痛々しく震えている。今、電子署名サイトが掲載された。「夫がなぜ自死に追い込まれたのか。弁護士、大学教授、精神科産業医らによる第三者委を立ち上げ、公正な調査を実施してください」と要望。当会報は皆さんに署名支援をお願いしたい。 https://chng.it/yBNFhJG97G