戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「9条の会さかい発信」 2020年6月 No.39

2020年06月19日 12:49

何故閉じ急ぐ国会

 コロナ禍で私たちの生活が脅かされているにも関わらず、与党は会期を延長せずに17日に国会を閉じてしまった。民主主義を侵害するような各種法案の行方はどうなったのか。この期に及んで何故閉じ急いだのか。
 2011年東日本大震災、民主党政権は1月から通常国会と臨時国会を継続した通年国会を維持した。それを要求したのも当時野党の自民党ではないか。
 今国会では安倍政権「桜を見る会」疑惑に始まり、森友土地売却真相究明の再燃、黒川検事長停年延長の法解釈変更が追及された。会期末近くなると給付金事業化における財政支出のいかがわしい中抜き委託の実態が露呈した。

 安倍内閣への支持率はこれまでにない急落ぶりだ。それ故、追及から逃れるための閉会ではなかったか。国民放棄の党利党略閉会だ。国会には行政を監視調査する責任があるはずだ。

 

監視社会モデル「スーパーシティ法」成立の恐怖

 ユヴァル・ハラリ(4月会報)がコロナ禍後の監視社会の到来を予言したモデルとなるスーパーシティ法が成立した。これは安倍政権の国家戦略特区(自治体から募集)を活用した「まるごと未来都市」政策商品だ。国や自治体が保有している個人情報や、民間企業が持っている行動履歴などの個人データを一元化して、様々な住民サービスに利用し、便利で快適な暮らしが強調されている。その一方で、個人情報の提供が求められる。住民一人ひとりのプライバシーが丸裸にされる可能性が否定できない。

 例えば、自分で病院に行けない高齢者が配車アプリで市民ボランティア運転の送迎車を呼ぶ。ボランティアには報酬が電子通貨で支払われるなどとても便利に聞こえる。その背後で高齢者の病状やボランティアの運転履歴から健康状態などが情報管理企業によって一元管理されるという。(東京新聞6月9日記事要約)

 この構想をまとめた有識者懇談会の竹中平蔵座長(給付金事業下請け会社パソナの会長)は、スーパーシティにおけるコロナ対策へ有効性に言及する。コロナ感染拡大防止には、市民活動を監視し、個人の位置情報をスマフォと街中の監視(防犯)カメラによる顔認証で生活全体を管理者が共有する。まさに、人権尊重の対極にある監視社会になる怖さがある。カナダのトロントでは市民の反対運動で計画が撤回された。私たちにもその自覚が求められている。
 

「国民投票法改正案」先送りに注視

 自民党は国民投票法改正案の成立を見送った。改憲を急ぐ姿勢を野党が警戒した。与野党間で改正論点の乖離があった。自民案は駅や商業施設での共通投票所設置など投票の利便性を盛り込んだ内容に、立民など野党はそれ以前にCM規制の論議を優先することで対抗した。

 そもそも現行法は公平性において多くの問題を抱えており、日本弁護士連合会が現行法の見直し8項目を挙げている。とりわけ、テレビ・ラジオの有料意見広告規制と最低投票率制度の策定は不可欠である。

 前者のいわゆるCM活動について現行法は規制が緩く、各政党から流される広告の量的制限がない。資金力の豊富な自民党にとっては有利になり、給付金事業疑惑で注目の巨大広告企業電通を抱え込んだならば圧倒的優位に立てる。さらに、日本民間放送連盟もそんな旨い話を前にして、量的な自主規制には後ろ向きである。また、ネット広告における流言飛語が横行した場合への対策が設けられていない。

 最低投票率については現行法に明記がないことが大きな問題である。国の最上位法規に対する改憲の是非がごく一部の投票者だけで左右されるとなればもはや国民主権ではない。

 コロナ国会の下、火事場泥棒の如き法案が先送りされたことに一時の安堵を思うが、今後の議論の行方に注意を払うべきだ。

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