戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「9条の会さかい発信」 2020年9月 No.42

2020年09月26日 17:20

 一人の黒人女性として

 大阪なおみは全米オープンの前哨戦を途中棄権してまで彼女のアイデンティティ(自己存在証明)をこのように表明した。世界的ランキングのテニスアスリートにとってこの行動は大きなリスクが伴う。しかし、人種差別への抗議はそれを遥かに超える大切なものとして、彼女は訴え、白人との対話を求めた。人間としての価値を最上位に置いたこの姿勢に、それが年齢や地位ではないことを知らされる。なぜそう思うのか。
 安倍政治の時代、政治家や官僚たちが犯す自明な不正行為との落差のせいである。例えば、法務事務次官時代に当時の小渕経産相や甘利経済再生相が絡む疑惑をもみ消すことを主導したとされるのが賭けマージャンで辞めた黒川元東京高検検事長この人。そして弁護士でもある森雅子法相(当時)は、法を歪めてまでして彼を検事総長に仕立てて、独立性の高い検察権力を安倍官邸の掌中に捕り込もうと謀った。
 彼らもその地位の人である前に一人の人間ではなかったのかと問いかけたくなる。人をここまで引きずり堕した安倍政治の罪は深い。

 

 

  コロナ禍中の乱心

 「今のコロナ禍を短時間で解消する方法は、どこかで大きな戦争が発生することではないだろうか。中国と米国が自国以外の地域で戦争を始めればお金は動く」。8月21日、新潟県燕市教育長が教育委員会でした発言はまさに乱心である。それが市ホームページに掲載されて市民の批判を呼んだ。発言を黙認した委員たちの無自覚さも深刻である。「燕市九条の会」は直ちに市長に抗議した。(次にもう一つの話題を)

 「新型コロナウィルスで町財政に影響が出た。他の交付金は取りにいくのに、これだけ取りにいかないのは変な話だ」と語ったのは、北海道寿都(すっつ)町の町長。原発から出る高レベル廃棄物の最終処分場選定に向けた文献調査に応募した。その見返りに20億円の交付金を受け取れるという。町長はコロナ禍による主要産業の海産物価格の低迷を懸念してのことと話す。

 役場前には『反対』の看板が立った。町は応募しただけで処分場は受け入れずに『もらい逃げ』のつもりではないかと、住民は憶測を漏らしながらも、応募した以上国はそんな甘くないのではないか、と戸惑う。住民と周辺自治体も町長に慎重な姿勢を求めている。

 この二つの話題、それぞれの思惑とコロナ禍とは脈絡がないように思える。前者は戦争の惨禍への思慮の欠片もなく、戦争特需にでもあやかりたいさもしさが剥き出しだ。後者は核ゴミ処分場がもたらす環境や風評への配慮と交付金との価値判断をどう計ったのかにおいて、同様な印象を拭えない。いずれもコロナ禍を持ち出すところに、国家が戦争を正当化する際の欺瞞と混乱が通底しているように見える。

 

 

「国と政府に戦争させてはいけない」と加える

 八月になると、新聞などには戦争体験者の方々のインタビュー記事が掲載されます。「戦争をしてはいけない」と当時の惨状を思いながら、多くの体験者が語ります。体験者でない私たちももちろんその思いは同じです。想像たくましくせずとも、一人の人間ならばそう思わない人はいないのではないでしょうか、たぶん。

 でも、私たちに「戦争をさせたのはだれでしょうか?」とそう問いたくなるのです。日本国憲法前文の最初の一文には『・・・政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し・・・』とあります。戦争は政府の行為と示されております。先の大戦の時、戦争を煽った側に新聞とそれに迎合した私たち国民がいたことは自覚しなければなりませんが、戦争主導したのは時の国と政府です。ですから、私(大竹)は「私たちは戦争をしてはいけない」、さらに「国と政府に戦争をさせてはいけない」と言おうと決意しました。

サイト内検索

お問い合わせ先

9条の会さかい(事務局) 090-8729-3008