戦争の過ちを二度と繰り返さないために

「9条の会さかい」発信 2019.1 No.22

2019年01月13日 16:13

税は「預ける」ものとの視点から

 日本人の納税意識に対して、意表を突いた論説(東京新聞2018.8.20)が記憶に残っている。

 北欧の国民の税感覚では、高い税金でもしっかりした生活保障を約束しているから不満を覚えないという。それは貯蓄や投資に近い感覚のようだと報じていた。税金は国に預けるものだから、どう使われて、社会保障にどう還元されるかに強い関心を払うという。

翻って日本の私たち、その税金の行方にどれほどの関心を払っているのだろうか。

 2019年度の防衛予算は5兆2、574億円が組まれ、安倍第二内閣から7年連続増額と5年連続の過去最大で組まれた。今後5年間に防衛力を整備する際に支出される金額が昨年末に示された。なんと27兆4、700億円にもなって、これも過去最大となる。

 その中身は、F35ステルス戦闘機1機130憶円が142機で機体と維持費合計6兆円、地上型迎撃ミサイルシステム/イ―ジス・アショア2基で同様に4、500億円以上、無人偵察機グロ―バルホ―ク3機で3、000億円、オスプレイ17機で6、000億円など、アメリカの言い値で爆買するものだ。その他、護衛艦「いずも」を空母化して、ステルス戦闘機を搭載できるようにすることや、長距離巡行ミサイルを導入するなども含まれている。

 安倍さんは判で押したように、安全保障環境の厳しさが格段に増していると言うが、これらの「敵地攻撃能力」を保有する防衛装備は、憲法9条の専守防衛から逸脱することになる。平和貢献してきた日本の自衛隊にとって、本当に必要な装備なのか、専守防衛に徹すべき日本の防衛姿勢にとって妥当なのか、私たちの税金がそのようなことに注ぎ込まれて良いのか。それで私たちの生活が幸せで豊かになるのか。私たちが預けた税の行方に向きあうときだ。

 

 

 誰にも影響すること

 安倍政権の下で際限なく防衛費が膨らんでいく一方で、生活保護家庭の食費や光熱費などに充てられる生活扶助の支給額が最大5%、平均1.8%も削られることになったという。生活保護受給の見直し額は、都市部など最も高い地域では、例えば40代夫婦と子供2人世帯で月9、000円減額、40代母子世帯で月8、000円減額、75歳独り世帯で月4,000円減額になってしまうようだ。

 現在、生活保護の受給世帯は約163万世帯、受給人口で約210万人に上る。しかし、65歳以上の高齢者世帯が全体の半数を超え、その9割が独り暮らしという。この層は将来も増え続けるだろう。

 生活保護費の減額にはもう一つ大きな落とし穴がある。それは、生活保護基準が国民生活の最低限水準であるナショナル・ミニマムの指標となっていることに関わる。これがさまざまな制度に連動して、賃金や受給水準を引き下げてしまう。
例えば、最低賃金法が生活保護との整合性を図る規定から、賃金の引き上げから引き下げに転じる可能性が生じる。現状が苦しい中で、多くの労働者の賃金と生活までが脅かされることになる。

 次に、住民税の非課税基準は、夫婦二人世帯で生活保護基準を下回らないよう地方税法で決められているそうだが、生活保護支給額が引き下げられれば、これに連動して課税水準が下がり、今まで非課税世帯が課税世帯となる。課税になると、医療保険の高額医療制度、病気の際の入院費、養護老人ホ―ムの入所、さらに、国民保険料や介護保険料、保育料など多くの制度の下で負担増になると警告する識者。

 生活保護基準が下がるということは、一般世帯の負担増につながり、家計を直撃する。そうした現実を踏みつけるように、私たちの税金が湯水のごとく防衛費に注ぎ込まれようとしている。生活保護費や年金の切り下げ、そして貧弱な教育予算を放置する政府の行為は憲法の平和主義と人権主義、憲法25条「生存権、国の社会保障的義務」に違反している。
 

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